舞台、映像制作のプロが教える撮影から編集までの基礎知識 撮影編⑤撮影に最適なポジションは?

イベントや舞台など、ホールや劇場、イベント会場などで撮影する際は
どんなイベントでもそうですが、どこから撮影するのか?はとても大切です。
撮る場所(カメラポジション)によって、映像の出来の良し悪しは
半分くらい決まったようなものです。
それくらいカメラポジションとシフト(どのカメラで何を撮るかなどの役割分担)が重要です。

テレビの番組やコンサート中継ですと、まずカメラさんが撮りたい撮影場所を確保することが多い気がします。
まあ放送ありきですから当然と言えば当然ですが、
カメラマンがここから撮りたい、ここが撮りやすいという場所を選べる選択権を持っているようです。
カメラマンがここの席から撮りたいと言えば、その周辺一帯はブロックされ、
カメラ席になるわけです。

ところが、これが舞台やイベントとなると、カメラマンは1番最後、後回しになることが多いんです。
これは仕込みの順番に起因するものと思われますが、
主催者様はまず何かイベントをやろうと企画するにあたって、
仕込んでいく、決めていく優先順位がおおよそですが以下の順番かと。

①企画や台本、脚本などの企画
②メインとなる出演者のスケジュールと会場となるホール、劇場
②美術的な舞台セットや大道具・小道具、音響、照明
そのほか、リハーサル室や稽古場の確保、などなど、ほぼほとんどのことが決まってから
思い出されるのが我々です。

あ、収録どうしよう、ライブ配信やる?DVD作る?
う〜ん、ま、もう少し詳細固まってからでいいんじゃない?
お客さんの入り状況見てから決めよっか!

で、いよいよ本番直前になってやっぱ撮影するか!ってなって
慌てて弊社に連絡が来ます。

「急ですけど来週空いてますか?」
なんとか調整できるものは致しますが、直前ですとなかなかどうにもならないことも多く
ご要望にお答え出来ないことも多々あります。
ステージアップは公演3日前までキャンセル料完全無料ですので
仮でもいいのでスケジュールだけでも押さえておいていただくことをお勧め致します。

もちろん事前にご連絡いただけるクライアント様もいらっしゃいまして、
カメラ席押さえますがどこにしますか?なんて聞いてくださる方も。

ただ観客のお客様が最優先ですので、
まずはお客さまの入り状況によってでしょうか。
余裕があるようであればある程度選択肢は増えますし、
嬉しいことに満席状態であれば、我々は必要最小限のスペースで行うのは当然です。
狭いスペースで斜めになって2時間以上撮影していて、首が寝違えたみたいになって
しばらく戻らなかったりもしましたし、
配信のベース基地を作る場所がないときは、物置の片隅や廊下、
階段の下でやることも多々あります。
が!観客ファーストをモットーに
こんな状況の中でも高品質な撮影をすることが重要と考えます。

では具体的に、どこをカメラ席で空けたら良いのかを考えてみたいと思います。
様々な事情や状況があることを無視して、
単に撮影だけのことを考えたわがままな理想で言わせていただくと
まず何はともあれ、
①真ん中後方、ど真ん中センターに定点カメラ
これは全体を撮影する無人の固定カメラですが、
ダンスやバレエ、演劇、ピアノや学芸会、どんなイベントであれ
全体を写す固定のカメラは必要です。
しかも、これは大変重要で、もしもカメラが一台しか置けないとするならば
このセンター定点カメラにするでしょう。
そして、このカメラはど真ん中でないと気持ち悪い画になってしまうのです。
わずか30センチほどずれただけで、撮影された動画はズレて見えてしまうので
ほとんどわがままは言いませんが、ここだけはど真ん中を確保したいです。

②続いて、このセンター定点カメラのすぐ近くにメインワークのカメラを置きたいです。
こちらはメインとなるチーフのカメラマンが務める場合が多く、
イベントの大筋を追う動きを担当します。
もしも定点以外で1台しかカメラがないのであれば、
このメインワークのカメラがイベントの全てを一人で撮影するぐらいの役割を果たします。
このカメラも中央であればあるほど望ましいです。

また、ダンスイベントやバレエなどではこのメインワークカメラを複数置くこともありますし、
他のサブカメラも中央から撮影する場合もありますので、
会場の座席表で言うと、真ん中後方のブロックをできれば2〜3列丸っと確保していただけると最高です。
もちろん1列でも構わないのですが、お客様がカメラが近く見づらかったり、
背伸びなどをした際にカメラにぶつかったり、急に立ち上がったりなど予期せぬことが起こりうるので
もちろんできれば!ですが、ブロックで確保していただけますとありがたいです。
しかし、このブロックは、音響PAさんや、照明さんも欲しがるところではありますので、
そこは各セクションでの相談になります。
音響さんによってはど真ん中じゃないと音のバランスが聞きづらいとか、
照明さんがバランスを見たいから真ん中は譲れないと主張する方もいらっしゃいます。
その場合どうなるか?
実は、まず我々の主張が通ることはありません。
何故ならば、多くの舞台やイベントは1週間とか、ある程度まとまった日数で行なう場合が多いのですが
それを毎日毎回撮影することは稀です。多くてダブルキャストなので2回とか。
しかも最終日とか、後半が多く、あまり最初の方の日程に撮影を希望される方はいません。
しかし、音響さんや照明さんは毎回必要です。なので、
初日に真ん中に陣取ってしまわれることが多く、
我々撮影隊がいきなり最終日にやって来て真ん中くださいと言ってももらえるはずがないのです。
それどころか、撮影があること自体を主催者様から聞かされていないことも多く、
「聞いてないよ!」と、ものすごい嫌な顔をされることがよくあります。

ですので、このスペースに無人のカメラ一台置かせてもらえませんか?とお願いして、
邪魔だと言われないギリギリの高さまで調整して、
「このくらいだったらお邪魔になりませんか?」「すみません、ありがとうございます」
と頭を下げまくることが常なのです。
ですので、音響さん、照明さんに撮影が入る旨を必ずお伝えいただいて、
場所も事前に調整いただると非常に助かります。

③そして、あとはイベントの内容やお好みによって
他のカメラを2〜3台設置することとなります。
先の述べたように、真ん中に何台もカメラを並べることもありますし、
前方や真ん中あたりの両サイドから狙うこともありますし、
これはケースバイケースです。

ダンスやバレエではあまり極端なアップは必要ないので、
真ん中後方にカメラを集めて撮影することが多いかも知れません。
また、会場の横から撮るということは、前に出れば出るほど角度がつきますので、
特にお子様の発表会ですと、お子様の横顔よりは正面からのお顔が嬉しいと思いますので
横からのカメラを置くことは少ない傾向にあります。
逆に演劇やお芝居などでは、対面のお芝居や
あえてアングルのついたショットが演出的にも効果的な場合もありますし、
音楽ライブや、クラシックコンサートなどでは変化をつけるためにさまざまなアングルが欲しいので
横からのカメラや上からとか、下からとか、
タッチの効いた多くのカメラアングルが必要になるケースが多いと言えます。

まとめ
①カメラ席はどこを確保するのか?集客状況や音響・照明さんとの調整も含め
 早めに相談する
②どのような映像が必要か?狙いやお好みなどあれば遠慮なく伝える
③ここを空けてもらえないと撮れないという事はないが、
 撮りやすい、撮りにくいはある。
④撮影はとりあえず後回し、にしない!